リアルより満足度が高い?バーチャル美術館をつくる

先日、国立博物館に行ってきました。教科書や資料集で見たことのある品々が展示されており、とても価値あるもののはずなのですが、どうも満足しきれずに帰ってきてしまいました。というのも、貴重なものほど厳重なガラスケースに入れられていたり、2メートル手前まで規制ロープが張られていたりして、よく見えなかったのです。ようやく近くで見られるものがあったとしてもレプリカでした。

ところで、博物館や美術館は全国に点在していますが、その多くは赤字でしょう。もともと素晴らしい美術品を誰でも見られるようにするための文化施設なので、黒字化を目指す必要はないのですが、箱物行政と揶揄されることも少なくありません。僕が住む富山県・井波には木彫刻総合会館という木彫刻作品のギャラリーがあり、木彫刻組合が管理しています。イギリスの建築家ピーター・ソルター氏の建築で、展示作品も素晴らしいのですが、来場者で賑わっているとはいえず、いつ訪れても貸し切り状態です。それでも巨大な建物を管理するために費用は発生し、組合員が負担し続けるという負の遺産になっています。

はたして美術館や博物館は必要なのか?レプリカしか見られないならVRでもいいのでは?という意地悪な問いを立てて、今回はバーチャル美術館を作ってみます。

VRは思っている以上に「そこにある」

VR未経験の人の中には目の前にスマホのような画面があるだけだと思っている人もいます。あるいは、何年か前に360度映像を簡易ゴーグルをつけて見ただけで(僕はこれをエセVRと呼んでいます)、VRはこんなもんだと思い込んでいる人も少なくありません。どうしてメタバースなどに熱中する人がいるのか、体験したことのない人には理解できないかもしれないのですが、思っている以上に「そこにある」のです。

実際に木彫刻師や地域の方々にVRで木彫刻を鑑賞してもらったところ、本当にそこにあるかのように、彫り方がどうだとか、木目がどうだとかいう話をしていました。ヘッドセットを外した後に目の前に彫刻がなくて、何が起こっているのか理解できずにフリーズする方も。それくらい、VRでの体験は「リアル」なものとして感じることができるのです。

バーチャル美術館をつくる

それではバーチャル美術館をつくっていきましょう。現実世界と違って、どれだけ大きい箱を作っても巨額の施工費がかかることはありません。ジオラマを作るように、自分だけの空間を自由に作っていきます。

モデルができたらUnityにインポートしてマテリアルやライティングの設定をしたり、Oculus用の設定を追加したりしていきます。

こちらがプロトタイプ。Oculus Quest 2のスタンドアローンで動作します。コントローラを使うことで自由に移動することができ、好きな角度から作品を鑑賞できます。VR用に軽量化しているため、お世辞にも現実と見分けがつかないほどリアルとは言えません。ディテールは失われ、テクスチャの解像度も荒くなっています。しかし、それでも写真で見る何倍も彫刻の魅力が伝わると個人的には思います。

これが現実の美術館の代わりになるとは言いません。けれども、本物の作品に興味を持つきっかけには十分なり得るのではないでしょうか。世界中どこにいても、世界中の作品に擬似的に触れられるのはVRにしかできない魅力です。

また、空間に物理的な制限が存在しないため、作品や展示に合わせて建物ごと作り変えることもできます。作家の世界観に合わせて建物をまるごとデザインすれば、作品をより魅力的に見せることもできるでしょう。

おまけ

ちょうどVketCloudのベータがリリースされたので実装してみました。PCでもスマホでも、アプリ不要でリンクを踏むだけでメタバース美術館にアクセスできます。(ベータ終了のため現在は非公開)